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風色時間

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巡る

気付けば通る風はすっかり乾いたものになっている。
晴れた空には未だ蝉の声が響くけれど
どこか過ぎる季節の名残を惜しむかのように
はかなさの片鱗を覗かせる。
店にはもう色とりどりな秋の果物が並び、
少しずつ夜も長くなって来た。
今年の秋はどうして過ごそうか。
出来ることならゆったりと
本や映画や、そんな気に入りの何かに囲まれて
贅沢に時間を過ごしてみたいものだけれど。
おそらくはきっと、そんなことを考えている間に
こうしていつの間にかに夏が通り過ぎてしまったように
追われるままに毎日は過ぎ去っていくのだろう。
まあそれも自分らしいのかも知れないと少し笑った。
今年も季節は確かに巡っていく。

ひとり時間~静模様~更新しました。
サイト、ブログへのご来訪、拍手、いつもありがとうございます。
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何か

大切なことには、きっとなかなか気づけない。
何気なく過ごしてしまっているうちに
いくつもそんな大切なものを置き忘れてきているのかもしれないと
ふと思うことがあったりするのだ。
抱きしめておかなくてはならないそれを
気にも留めずに置き去りにしてきながら
手放してしまいたい思いは何時までもどこかに居座っている。
何時か人は時間を重ねていくうちに
痛みを忘れることが出来るのだろうか。
それは何時までも色褪せずに
鋭利な刃物のように胸の内に居座るというのに。
忘れるということは成長すると言うことなのかそれとも
ただ麻痺していくと言うことなのか。
拭えない痛みならば、痛みとして感じていくのも強さなら
それを感じないようにしていくのも強さなのだろうか。
愚にも付かないことを考えながら
見上げた空を流れる雲は早い。

  ひとり時間~静模様~更新しました。

アーケード

小旅行の帰りの途中
何となく立ち寄った駅前の商店街。
アーケードの文字に驚いて足を止めた。
それは少し前によく聴いていた曲のタイトル。
ああ、あの場所はここなのだろうと、旋律が鮮やかに蘇った。
店の並びを眺めながら歩調を落として歩く。
初めて訪れる場所であるのに、どこかしら懐かしい雰囲気を
不思議に思いながらもその時間を楽しんだ。
駐車場に戻って、車をスタートさせてから
ああ、子供の頃に過ごした街に少しだけ似ていたのだと
信号待ちで、やっと気付いた。

オリオン通り。
郷愁なんて言葉は、自分には気恥ずかしくもあるけれど。

  ひとり時間~静模様~更新しました。

季節を

なんだか今年の夏は、朝顔をあまり見ない気がする。
たまたま目に入らないだけなのかもしれないけれど
気にして見てみても、どうにも見当たらないように思える。
あまりに暑いせいなのかな、なんてちょっと考えたりもする。
そうかと思えば気の早いコスモスの橙黄色に今朝出会った。
長閑な通勤路沿いには青い栗のイガがぽとりと落ちていて。
季節を感じるような、妙にずれているような。
ともかくまだしばらくは、どうにもやっぱり暑いのだろうな。

君色時間~穏模様~更新しています。

サイトへのご来訪、拍手、ありがとうございました。

廊下にて

あまりに暑い日が続くと
どうにもいろいろ嫌になって
ちょっとぼんやりと動いていた仕事の始め。
いつも通りの時間、いつも通りの白衣、いつも通りの病棟の廊下。
病室から見える中庭には、もう遠慮の無い日差しが見え始めていて
なんとはなしに、溜息だってつきたくもなる。
贅沢だって、分かってはいるけれど。
「おはようございます」
食堂に向かう車椅子の患者さんとすれ違う。
40床あまりの病院で、こうして移動できる方は、本当にほんの少し。
最後にすれ違った方は、確かもう3,4年になる女性の方。
「お世話になります。早くからご苦労様」
笑顔でそう言ってくださった。
なんだか申し訳無い気持ちになって、俯いていた気持ちを切り替える。
自分の倍以上の年齢を重ねてこられた方々に
いつも色々を教えていただく毎日だ。
そう代わり映えのない日々だけれど、悪くない毎日だと思ったりもするのだ。

 君色時間~穏模様~更新しました。