風色時間

気付けばあっという間に季節はぐるりと一周して

もうすぐまた夏になる。

年々一年を短く感じるようになった気がして

すこしばかり焦ったりもするけれど。

去年の自分と今の自分

果たしてどこかが違うのか

違うとしたならば

いい方向への変化であってくれるのか・・・。

それなりの年齢になってからの一年一年は

ジャンプアップするような変化なんて無いわけで

でもまあ、またこんな風に来年の夏も迎えられたのなら

それはそれで幸せなんじゃないかって

思ったりもするのです。

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えみこさんという名の患者さんがいる。

“笑う”、に“子”で、えみこさん。

素敵なお名前だと始めに思った。

実際に投薬窓口でお話したならば、本当に

ころころと笑う、素敵な方で。

年齢は自分よりも二回りは上の方。

ああ、あんな風にいつでも笑顔でいられればいいと

そのたびに思うのです。

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トンボ玉に最近、心を惹かれている。

小さなガラスの中に小さな世界が閉じ込められているようで。

持っているのは趣味のための資材クラスで安価なものばかりだけれど

見ていると飽きない。

特に中に花模様を閉じ込めた淡い色のものが気に入っている。

ビー玉のような丸いものだけで無く、楕円のものや四角いものもある。

円柱形のものなどは小さな小さな氷柱花のようで。

表面を多面体にカットされているものも光の反射が美しい。

ひとつひとつ、微妙に絵柄が異なるのもまた、いいものだ。

そう言えば、子供の頃からガラス細工が好きだった。

中に罅の入ったビー玉をずっと大事に持っていた。

旅行などに行った時、“ガラス館”などと名のつくものがあれば

大抵ワクワクしながら見て回ったものだ。

今年の夏、旅行に行く余裕があったなら

またどこかのガラス館を、訪れてみたい、なんてちょっと思っている。

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夏まではまだ遠いはずなのに“夏日”が続いています。

この時期、強すぎる紫外線と、湿度混じりの高温に

どうぞご注意を。

どんな時にも感謝の気持ちを忘れてしまってはいけないと
その人は笑顔で何度も教えてくれた。
年寄りが余計なことを言っていると思うだろうけど、なんて付け足しながら。
彼女はその時、痴呆の症状がはっきりと出始めた頃で、
色々なことを忘れてしまうから同しことを言っているかもしれなくてごめんなさいね、
なんてちょっとだけ哀しそうに、それでも笑顔で言っていたことを良く覚えている。

遠縁の叔母、にあたる人、というには家系図的にも距離がありすぎる人だけれど、

暫く一緒に暮らしていたことがある。

遠くない過去にたくさんの辛いことがあって、それでもカラカラと良く笑っていてくれた。
疾病のせいで記憶に障害が出ていると自分で理解しておられ、

『きっと哀しいことを思い出さないように神様がしてくれたのかもしれないわ』、と

あるとき小さく呟いた声が耳に残っている。

今は施設に入所している彼女にもう２年ほども会ってはいないけれど

彼女のくれた言葉を忘れたくないと深く思う。

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お時間のあるときにでも、また運んでやってください。

薔薇はあまり好きではなかった。

如何にも“花”という雰囲気や、そこにあることを知らしめる香り

そんな強さが苦手だったのかもしれないと思う。

強いものは苦手だった。

今思えば怖かったのだろうと思う。

曖昧なものや穏やかなものばかりを好んできた。

けれどもそんな苦手意識もいつの間にか随分と薄れて

改めて、この花を見た。

薔薇ノ木ニ薔薇ノ・・・と

詠ったのは誰であったか思い出せないけれど

薔薇の花は凛と咲き、静かにその香を漂わせている。

綺麗なものを綺麗だと

素直に思える自分であれたなら、いい。


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写真は、病院の小さな中庭の薔薇です。

今が盛りなのでしょう。

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