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風色時間

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「歩く」


乾いた空に、工事現場の音が響く。
青は何処までも澄んで、果てはきっとものすごく遠い。
通勤路の庭先では柑橘の黄色が鮮やかに実っていて
秋から冬へと、季節は確かに移ろっていくようだ。
去年と、今と、来年と
きっと世界はそんなに違わない。
僕はどうなのかな。
何を覚えて、何を失ったんだろう。
何を忘れて、何を手に入れるんだろう。
まっすぐに歩いて行けるのかな
まっすぐに前に進まなくてもいいのかな
もしかしたら
何処かで誰かが
僕を待っていてくれたりなんて、するのかな。


 君色時間~穏模様~更新しています
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こんな出来事

以前は判で押したように、毎週同じ曜日の同じ時間に診察にみえていた患者さんが、
ここ暫くは曜日も時間もばらばらになっておられました。
どうしたのかな、とは思っていましたが、薬が切れる前には必ずおみえなので
お尋ねするところまではいかなかったのですが、
先日会計窓口でお話しになっておられました。
今まではご主人が送り迎えをされていたそうです。
病院の駐車場までなのでお見かけしなかったのですね。
しかし半年ほど前に急に倒れてそのままお亡くなりになってしまわれたとのこと。
お二人暮らしで、勿論気落ちもされ、病院ももういいかと思っていたところ、
ご近所の方々が、そんな彼女を心配して、それからずっと
そろそろ病院じゃないの?と代わる代わる訪れては
空いた時間に病院まで送迎してくださっているそうです。
「だから来る日が一定しなくてごめんなさいねぇ」とのお言葉。
「でもね、ありがたいものですよ。なんかみんなに心配してもらってね。
 だからもうちょっと元気で頑張ろうと思って」
そう言って少し俯いて、笑っておられました。

 
 君色時間~穏模様~更新しています。

「時には」

時にはゆっくり歩いてみよう。
空を見上げて、風を感じてみよう。
もしかしたら見えなかったものが見えてくるかもしれないし
知らなかった何かに出会えるかもしれない。
ちょっとだけ回り道をして
季節の色や匂いに触れてみるのも
きっと悪くはないんじゃないかな。
一生懸命に毎日を過ごすことはとても素敵なことだけれど
少しだけ力を抜いて見てみると、きっと違ったものも見えるはず。
全力で走っている時には横を向く事なんてできないから
そうじゃなくて
ちょっとしたこころの余白に
たまには穏やかな旋律を映し込むのも悪くは無いはず。
確かに「今」は、今だけかもしれないけれど
だからといって焦る必要なんてないんだってこと
君はとっくに解っているかもしれないけれど。

朝に思う

外来の始まる少し前、朝の病院は一番ある意味賑やかだ。
今朝は冷えたね、と話す患者さんと職員の声。
大丈夫、今年も咲くよ
とはきっと待合室の電話台の脇の鉢植えのことだ。
農家の方も多いから、様子を見て下さる機会も多く、
いくつかの鉢植えは結構元気に育っている。
艶やかな緑の葉に視線をやって、不意に思い出した。
毎年、きっと今からは少しだけ前の時期になると
大輪の見事な菊の鉢植えを持ってきて下さっていた方のことを。
残念ながら、今年から、お会いすることはできなくなってしまったけれど。
季節は移り、確実に時間は流れる。
暑いころには秋を待ち望み、寒さが募ってくる度に次の春に思いを馳せる。
なんて我が儘なんだろうと思わないでもない
でも、
そうして日々を過ごしている。


 ひとり時間~静模様~、更新しました。

「ひといろ」

必要以上に無理をしちゃいけない
必死に我慢をしなきゃいけないことなんてない
でもね
一時の激情に任せて、何もかもを放り投げてしまわないで。
過ぎた重荷はその背中から下ろしてあげなきゃいけないけれど
ちゃんと抱き締めていなくちゃならないものは
しっかりと守っていくんだよ。
想いを詰めた風船が壊れたら、また、新しく膨らませればいい。
何度だって出来るんだ。
叶わなくてもいい、それでも
青い空に放してあげて。
短い糸で、どこかに括りつけられたままじゃ
空までずっと遠いから。